第5話 南京中央大学に失望
昭和17年9月、私は一時退職して、国立南京中央大学に入学した。
目的は中国語をもっと深く知り、志ある中国の青年たちと知り合う事にあった。しかし夢は破れた。
国立南京中央大学は、アメリカ系の金陵大学を接収した後に南京政府が作った大学で、校舎は立派だが教授陣はいい加減だった。北京語がまるで喋れず、広東語と英語で講義してしまう女性教授までいた。
生徒も政府高官や金持ちの子弟ばかりで、志もなにもないグータラな男がほとんどだった。
論語の現代語訳の試験などは、日本人の私の方が上位になる有様で、しばしば教授達を嘆かせていた。
翌年の夏休みに1ヶ月間日本に帰った。
家族とゆっくりしたり、たまたま蚌埠特務機関でお世話になった渋谷さんが、病気療養で一時帰郷していたのを、山形に訪ねたりした。
8月末、南京に戻ったが、総司令部報道部に呼ばれ、大学をやめて再び働くことになる。既に戦局は悪化の一途をたどっていた。
結局私は、昭和19年初頭 蚌埠特務機関に復帰したのである。
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